基金の事務長
<代行返上>
シェアードサービス事業を立ち上げて
手ごたえを感じていたのですが、
立ち上げて3か月後には
「厚生年金基金の事務長を命ずる」
との辞令をいただきました。
当時、株式市場が暴落して、
厚生年金基金の「代行返上」という言葉が
一世を風靡し始めていました。
誰かに「代行返上」をやらせようというときに、
白羽の矢が立ったとのことです。
たとえどんな仕事であろうと、
指名されるというのは、
会社員にとってうれしいものです。
何だかわからないが頑張ろう!
という気になりました。
3か月の猛勉強
しかしながら、年金制度も資産運用も全く経験がありません。
最初はとにかく勉強でした。
3か月間で100冊の書籍を読みました。
年金制度、財政検証、退職給付会計、資産運用、政策アセットなど。
毎日1冊以上です。
通勤時間から昼休み、夜寝るまで読み続けました。
あんなに勉強したのは、
後にも先にもあの時よりほかにありません。
人間やればできるものです。
勉強した結果
「代行返上は絶対にやるべきだ」
との信念をもちました。
30億円を国に返せば、
50億円の債務が消滅するのです。
差引20憶円の利益が会社に生じるのです。
やらない選択肢はありません。
しかしそのためには、
その不利益について従業員に説明して、
2/3以上の同意書を集めなければなりません。
全国で説明会を開いて不利益の内容を説明しなくてはなりません。
そのうえで同意書に押印してもらわなくてはならないのです。
全国の事業所を回って説明会をしました。
いろいろな厳しい質問も浴びせられました。
でも真摯に丁寧に説明をして、
厳しい現状を説明すると
結果的には95%以上の同意を得ることができました。
結果を集計したときに感じた手ごたえは
とても大きいものでした。
<資産運用の経験>
資産運用も貴重な経験となりました。
私が基金の事務長に就任したのは、ITバブルがはじけ、
株式市場が3年連続で暴落した3年目のことでした。
その年の決算では、
なんと150億円も積み立て不足があることが判明しました。
将来、みんなの年金を支払うためには
この150憶円を穴埋めしなければなりません。
気が遠くなる数字です。
就任当時、投資会社の営業マンから、
「あなたはラッキーですよ。
3年連続で市場が下がったことは初めてです。
これからは当分上がり続けますよ。」
といわれました。
話半分で聞きましたが、
本当にその後3年間株式市場は上がり続けました。
そして、運用収益と年金制度の改定と、
会社からの掛け金の増額によって、
3年後に私が異動するときには
150億円の積み立て不足をすべて解消できたのでした。
まさに奇跡の3年間でした。