私の大切な思い出です。
ボサノヴァの名曲に、「おいしい水」という曲があります。
人によっては、アストラッド・ジルベルトとか
アントニオ・カルロス・ジョビン
という名前がすぐ出てくる方も
いらっしゃるかもしれません。
そういう方は、たぶん私と同じ
年配の方でしょう。
ここでいう「おいしい水」は
ボサノヴァとは全く関係ありません。
まさに、そのもののことです。
私は、高校時代ワンゲル部に所属していました。
正式にはワンダーフォーゲル部という名称で
要は、山登りをするクラブです。
重い荷物を背負って、山道を何時間も歩くことは
今から思えば苦行のようなものでしたが、
当時、いちばん楽しみにしていたことが、
水場で冷たい清水や湧水を飲むことでした。
水場はそう多くはありません。
何時間も耐えて、歩いて、我慢して
ようやくその先に水場があった時
これほどの喜びはありません。
今までの苦痛が
すべてむくわれた気分です。
本当にゴクゴクと音を立てて
水をむさぼり飲んだものです。
今から考えると、
その「おいしい水」こそが
私の幸福でした。
目標でした。
「おいしい水」を飲むためだけに
何日もトレーニングをして、
準備をして、
何時間も歩き続けたあのころ
本当に純粋だったと思います。