生きがい

陶芸(その2)

「失敗に学ぶ」

陶芸で重要なことは、
理論よりもまず実践です。

ろくろ回しも、
初めての時には誰しも失敗するものです。

何度も失敗しながら、
コツを体で覚えてゆくのです。
初心者のころ、
先輩に言われたことは、
「とにかく、湯飲み茶わんを100個つくってみなさい」
とのことでした。

理屈ではなく、
まさに体当たりで
「失敗から学べ」ということです。

私は、馬鹿正直に言われたとおりに挑戦してみました。
最初は、何をつくっているのかわからないくらいひどいものでした。

「中心がとれない」ためだったのです。
ろくろは回転しながら成型するものなので、
中心がきちっと定まっていないと何もつくれません。

この「中心をとる」ということは
体で覚えるしかありません。

しかしながら、一度この感覚を覚えると、
おもしろいように成型できるようになります。

次にショックを受けるのは
作品を窯で焼いたときにちぢんでしまうことです
約1~2割もちぢんでしまうのです。
したがって、作品は大きめにつくらなければなりません。

茶碗のつもりが湯飲みに、
湯飲みのつもりが、ぐい飲みになってしまうのです。
あらかじめ、ちぢむことを計算して成型する必要があります。

そして、何よりも予測できないのは、
釉薬(うわぐすり)です。
釉薬を塗るときには、
出来上がりが全く想像できません。
色も感触も全く別物なのです。
1400度の高温で溶けて化学変化して
初めて発色します。

しかも、温度だけでなく、
その温度に至る時間や
熱風のあたり具合によっても
発色のしかたが変わってしまうのです。

このように、ある程度の経験をつむまで
予想外のことばかりです。

100個の湯飲み茶わんをつくっても、
途中で割れたり、釉薬が流れてしまったり
色が思うように出なかったり
結局、何とか作品としてできあがったのは
わずか30個ぐらいでした。

しかしながら、
その過程で学んだことはとてもたくさんありました。
「失敗に学ぶ」ということは、
この時に身に着きました。

後日、この時につくった作品を大学祭で販売しました。
若いカップルが、おそろいの白い湯飲みを買ってくれました。
ふたりとも、互いにうなずきあって、
数ある作品の中から
私の作品を買ってくれたのです。
感動しました!

あのときのふたりは、どうしているでしょう。
その後の幸せを祈りたいと思います。